会社から給料を受け取ることができるのは、給料日のみだと思っていませんか。
生活していると、急にお金が必要になることがあります。急な出費のために給料日まで待つことが難しい場合は、一定条件のもとで給料前借りが可能です。お金に困ったときは、給料前借りも資金調達法のひとつになります。
- 給料前借りの条件
- 給料前借りの手順
- 給料前借りのデメリットや注意点
困ったときに使える給料前借りの基礎知識を解説します。
給料前借りできるのか？条件や前借り額について
給料は給料日に受け取るものという印象があるかもしれません。実は、一定の条件のもとで給料前借りをすることが可能です。
給料前借りについては、労働基準法25条に定められています。
社員が給料前借りを申し出たら、会社側は給料前借りに応じなければいけないのです。給料前借りは「非常時払い」とも呼ばれます。社員から請求があった場合は、会社側は給料前借りに応じる義務があるのです。
ただし、お金に困っていたら、どのような状況でも給料前借りが許されるわけではありません。労働基準法25条には、給料前借りの条件が定められています。
労働基準法25条に定められた給料前借りの条件は「出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合」です。「非常の場合」については、労働基準法施行規則の9条に定められています。
給料前借りを会社に請求できるケースは、労働者（社員）または労働者の収入によって生計を維持する者が、以下のようなケースに該当した場合です。
なお、生計を維持する者は、生計さえ維持していれば、ただの同居人など、血縁や親族、婚姻などの関係にない者でも問題ありません。
- 出産
- 疾病（業務上か否かを問わない）
- 災害（地震や大雪などの自然災害も含む）
- 結婚
- 死亡
- やむを得ない事由によって一週間以上にわたり帰郷する
前借りできる給料の額は？
給料前借りできる額は、労務を提供した分です。つまり、給料前借りをお願いした時点で働いた分だけの額を給料前借りできるわけです。
たとえば、2020年2月17日に給料前借りを申し出た場合は、働いた分だけの金額が給料前借り額になり、2020年2月20日（将来、まだ働いていない分）の分は給料前借りの支払い対象外になります。
給料前借りの支払い期日は特に定められていません。非常時の資金調達なので、会社（使用者）側は速やかな支払いが基本です。
パートやアルバイトも給料前借りできる？
パートやアルバイトでも給料前借りは可能です。契約社員や派遣社員も、給料前借りできます。
労働基準法9条は労働者について「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と定めており、この労働者に該当する人は給料前借りできるのです。
給料前借りに応じない会社には罰則がある
給料前借りに応じることは、会社側に課された義務です。
危急の事態に陥った労働者が給料前借りを請求したら、会社は応じなければならず、「次の給料日まで支払いたくない」「会社のルールとして定めていないため、応じることはできない」などの対応をすることは基本的に許されません。
危急の事態によって給料前借りをお願いした従業員に対して給料前払いを実施しなかった会社（使用者）は、労働基準法120条に定められる罰金刑（30万円以下）に処されることがあるのです。
会社側が給料前借りに応じなかったせいで社員に損害が出た場合は、民事における損害賠償請求が認められる可能性もあります。
会社から給料前借りする手順
会社から給料前借りをするためには、特別な手続きは必要ありません。会社側に給料前借りをしたい旨、請求するだけです。
給料前借りには前述した通り、条件があります。給料前借りを会社（担当部署や担当社員、経営者など）にお願いすると、なぜ給料前借りが必要なのか理由を確認されるはずです。給料前借りが必要な理由をしっかりと伝えることが重要になります。
会社によっては、給料前借りの申請について定めていることも。会社内で給料前借りの申請書などがある場合は、社内の手順に沿って手続きを進めましょう。
給料前借りのデメリットや注意点
給料前借りにはデメリットがあります。給料前借りはデメリットや注意点を知って使いましょう。
給料前借りのデメリットや注意点は3つあります。
- 借金の申し入れと混同されることがある
- 給料前借りが処罰の対象になることがある
- 理由によっては給料前借りできない
借金の申し入れと混同されることがある
法律などにおいては、給料前借りは非常時払いと呼ばれることがほとんどです。給料前借りという言葉は借金申し入れの意味も含んでおり、会社側に勘違いされることがあります。
たとえば、「非常時払いについて相談したい」と言った場合、会社側は「労働基準法25条の非常時払いについて相談したいのか」と、理解しやすいことでしょう。しかし「給料前払いについて相談したい」と言うと、「非常時払いのことだろうか。それとも、給料日に支払われる全額を求めているのだろうか」と、首を傾げる可能性があります。
非常時払いの対象になるのは、働いた分です。給料前借りという言葉を使った場合、まだ働いていない分も含めて給料相当額を渡して欲しいという意図なのかと、勘違いされる可能性があります。しっかりと意図を説明するよう、注意が必要です。
給料前借りが処罰の対象になることがある
労働基準法17条では、「労働などを条件に会社がお金を貸して、給与から差し引くこと（債権と賃金を相殺すること）」を禁止しています。違反した会社（使用者）には、罰金や懲役などの罰則があるのです。
給料前借りとして、金銭の融通をすることは禁止されていません。会社（使用者）が社員に対する信用や好意から、非常時払いの対象になる金銭以上を支払ってくれるかもしれません。労働基準法17条に反しないよう、注意が必要です。
理由によっては給料前借りできない
給料前借りをするには条件があります。給料前借りできるのは、基本的に危急な事態で困っているケースです。給料日が定められているわけですから、給料日に支払いを受けることが基本です。
給料前借りできる以外のケースでは、会社側に給料前借りに応じる義務はありません。カードローンやキャッシングのように使えないのです。
会社員側にとっては「いざというときの資金調達方法としては使いどころが難しい」というデメリットがあります。
お金の計画や金策は普段からしっかりと！
給料前借りを会社に請求することは可能ですが、条件のもとでしか使えません。給料前借りはキャッシングやローンのように、「生活費にちょっと困った」などのときに使うことは難しいのです。
普段からいざというときのために、お金の計画はしっかり立てておきたいもの。
金策について知っておくことも重要です。クレジットカード現金化などいろいろな金策があるので、いざというときに使える方法として知識を蓄えておきましょう。
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